2020.05.27|お灸のお話季節のお灸日記

自律神経失調症とお灸の話し②

4月下旬に自律神経失調症とお灸の話し①をしてから少し時間が経ちましたが、本日は自律神経失調症とお灸の話し②をいたします。

自律神経失調症と言っても症状は十人十色で、朝起きられない・力が入らない、夜眠れない、集中できず仕事が上手くいかない、立ちくらみを良く起こす、外出予定があるのに生き渋る・また遅刻する、便秘でお腹にガスが溜まり苦しい、悩むとお腹がゆるくなる、肩が凝りすぎて頭まで重くなる、眉間の奥がドーンとする・・・など、人それぞれ悩みが違います。(来院患者さんの症状の一部です)

お灸はリラックス・癒しの効果が高いこともあり、当院は自律神経失調症や更年期障害で悩まれている方が多く来られるので、鍼灸学生や鍼灸師に『どこにお灸を据えると効きますか?』という質問をかなり受けます。

それは『家族やお友達、患者さんに少しでも良くなってもらいたい』、『鍼よりお灸の方が効きそう』、『お灸なら自分でもできるから勧めやすい』など前向きな質問でとても嬉しいことなのですが、ご説明するためには、その方のお悩みの症状と期間、身体の体質、心の状態、生活環境とリズムをお聞きする必要があるので一概に説明することはできませんが、今回は症例からお灸を据えるポイントと心構えをお伝えいたします。

先ず私は、自律神経失調症を『自律神経の機能低下』と考え、今どうして自律神経機能が低下しているかを、きっかけや原因、生活環境とリズム、仕事環境などをお聞きして、その上で、お顔、脈、お腹、背中、手足などの状態を確認し、機能低下による『現在のお身体の状態』をご説明し『こころのあり方』のお話をしています。

 

ある患者さんは産後からより体調を崩し、貧血、夜間のくいしばりによる頭痛、さらにめまい、不眠、たくさん汗が出る、身体が疲れやすい、髪の毛が抜ける、目が疲れる、腰が痛い・・・という症状で来院されました。

頸や背中を触ると板のように固まっていて、顔色が悪く、頭皮は浮腫んでいて、深い眠りができず疲れの積み残しがあり、気血の巡りが悪くなっているのが分かります。その中で、大声を出して暴れるお子さんのお世話をしていると聞くだけで大変さがとても伝わります。

今抱えている不安とこれからの不安、寝ても疲れが取れない状態で朝が起きられないし力が入らない・・・。これ以上悪化する前に来院して頂いて本当に良かったです。

そして、これらの症状を一回のお灸で和らげようとたくさんお灸をすると、弱っている患者さんはフラフラになってしまいます。

しっかり順番を決め、苦しいものから和らげていくようにし、お灸で根本的に良くなっていきます。

自律神経の機能低下が起こっている方は、頭、顔、頸(頭と首の付け根と耳の後ろ)には必ず相応の反応があり、また、集中力の低下や夜眠れない方は左の肩甲骨の内側と両背中に反応が現れています。

その反応に合わせお灸を捻りツボを活かし、また温灸で温め気血の巡りを良くすることで症状を和らげて安心していただきます。

 

『お灸の心構え』、私のお灸の心構えでもあります。

日蓮上人が、産後から体調を崩し出家された後も体調のすぐれない富木尼御前に送った手紙『富木尼御前御書』にはこのような記載があります。

「なによりもをぼつかなき(覚束ない)ことは御所労(病気)なり。かまへて三年、はじめのごとくに、きうじ(灸治)させ給へ」

>何よりも気がかりなのは病気の事です。先ずは三年とはじめに決めて灸治療をなされると良いでしょう。

すべての病気が直ぐに治るわけではなく、多くの病気は一定の経過があります。長く掛かるものは患者さんに覚悟を決めてもらい、根気よく治療することが必要になります。

『石の上にも三年』ということわざがありますが、セルフケアお灸も腰を据えるような気持ちで続けて頂きたいと考えています。

(お灸は焼くではなく据えるというのは、こういう意味からだと思っています)

そして、自律神経失調症の方に比較的多くおすすめしているセルフケアお灸のツボをご紹介いたします。

それは『合谷』です。

特に、不眠の方は夜に、集中力や活動力の低下には朝に据えていただくようにしています。

特に長いこと患っておられる方には、根気よくお灸を据えて頂ければと思います。

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